はしくれエンジニアもどきのメモ

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カイジのEカードの勝率を計算する

カイジのEカードの勝率を計算する

図書館でNewton別冊”確率に強くなる―「偶然」にひそむ数学法則”(2010年発行なのでちょっと古い)を読んでたら面白いコラムがあった. 選択制じゃんけん.つまりEカードの勝率である.

詳細な解説は本に任せて,一部誤植を見つけたので自分でも計算してみる.

Eカードのルール

  • 1vs1で皇帝側と奴隷側になる.
  • 皇帝側は「皇帝」カードx1,「市民」カードx4
  • 奴隷側は「奴隷」カードx1,「市民」カードx4
  • 3すくみの関係があり,皇帝>市民,市民>奴隷,そして唯一奴隷は皇帝に勝てる(奴隷>皇帝’)
  • これらカードをお互い出していき勝敗を決める.カードは5枚なので5回線で決まる.

詳細は漫画の方で. なお,漫画では基本心理戦でランダムに出すのは禁止

今回はランダムに引いたときに皇帝側が勝つ確率,奴隷が勝つ確率を求める.

各出し方の勝ち負け表

皇帝,奴隷の各出し方のパターンの勝ち負けの表を作る. 皇帝,奴隷は1枚ずつより何回目に出すかで5パターンある.

Aを皇帝側,Bを奴隷側とする.

A \ B (奴隷,市民,市民,市民,市民) (市民,奴隷,市民,市民,市民) (市民,市民,奴隷,市民,市民) (市民,市民,市民,奴隷,市民) (市民,市民,市民,市民,奴隷)
(皇帝,市民,市民,市民,市民) A✕ B○(1回目で決着) A○ B✕(1回目で決着) A○ B✕(1回目で決着) A○ B✕(1回目で決着) A○ B✕(1回目で決着)
(市民,皇帝,市民,市民,市民) A○ B✕(1回目で決着) A✕ B○(2回目で決着) A○ B✕(2回目で決着) A○ B✕(2回目で決着) A○ B✕(2回目で決着)
(市民,市民,皇帝,市民,市民) A○ B✕(1回目で決着) A○ B✕(2回目で決着) A✕ B○(3回目で決着) A○ B✕(3回目で決着) A○ B✕(3回目で決着)
(市民,市民,市民,皇帝,市民) A○ B✕(1回目で決着) A○ B✕(2回目で決着) A○ B✕(3回目で決着) A✕ B○(4回目で決着) A○ B✕(4回目で決着)
(市民,市民,市民,市民,皇帝) A○ B✕(1回目で決着) A○ B✕(2回目で決着) A○ B✕(3回目で決着) A○ B✕(4回目で決着) A✕ B○(5回目で決着)

勝率や期待値を計算してみる

全パターンは$5\times 5=25$通りになる.

勝率

Aが勝つ確率を考えると,Aが勝つパターンは5パターンのうち各4通り存在する.よって,$5 \times 4=20$通りになる. (※Newton別冊”確率に強くなる”だと,”16”と誤植になっている.)


P(A) = \frac{20}{25} = \frac{4}{5} = 0.8 = 80[\%]

同様にBの勝つ確率は,5通りより


P(B) = \frac{5}{25} = \frac{1}{5} = 0.2 = 20[\%]

大分,皇帝側が有利だとわかる.

\ A B
勝率[%] 80 20

1回目で決着がつかない,つまり2回目以降の勝率を考える. 2回目以降に決着がつくパターン16通り, 2回目以降にAが勝つパターンは1回目を除いて,12通り.


P( A | n>=2 ) = \frac{12}{16}  = \frac{3}{4} = 0.75 = 75[\%]

2回目以降にBが勝つパターンは,4通り.


P( B | n>=2 ) = \frac{4}{16}  = \frac{1}{4} = 0.25 = 25[\%]

3回目以降も考える.Aが勝つのは6通り. Bが勝つのは3通り.


P( A | n>=3 ) = \frac{6}{9}  = \frac{2}{3} = 0.66 \cdots = 66.66\cdots [\%] \\\\
P( B | n>=3 ) = \frac{3}{9}  = \frac{1}{3} = 0.33 \cdots = 33.33\cdots [\% ]

同様に考えて表にまとめると,

\ A B
2回目以降の勝率[%] 75 25
3回目以降 66.67 33.33
4回目以降 50 50
5回目以降 0 100

4回目以降でようやく皇帝側と奴隷側がイーブンになることがわかる. 5回目では,皇帝と奴隷が残っている場合のみなので必ず奴隷側が勝つ.

期待値

皇帝側,奴隷側関係なく決着がつく回数の期待値を計算する.

決着がつく回数のパターンは,

  • 1回目:9通り
  • 2回目:7通り
  • 3回目:5通り
  • 4回目:3通り
  • 5回目:1通り

\begin{eqnarray}
E[n]
&=& 1 \frac{9}{25} + 2 \frac{7}{25} + 3 \frac{5}{25}+ 4 \frac{3}{25} + 5\frac{1}{25}\\\\
&=& \frac{9+14+15+12+5}{25}\\\\
&=& \frac{55}{25}\\\\
&=& \frac{11}{5} \\\\
&=& 2.2
\end{eqnarray}

ランダムにやると,約2回で決着がつくという面白みのないゲームだとわかる.つまり漫画のような心理戦が必須だといえる.

この期待値のうち,皇帝(A)が勝って決着着く回数とその割合,奴隷(B)が勝って決着着く回数とその割合を計算する.

期待値2.2のうち,Aが勝って決着着く回数


\begin{eqnarray}
E_{A}[n]
&=& 1 \frac{8}{25} + 2 \frac{6}{25} + 3 \frac{4}{25}+ 4 \frac{2}{25} + 5\frac{0}{25}\\\\
&=& \frac{8+12+12+8+0}{25}\\\\
&=& \frac{40}{25}\\\\
&=& \frac{8}{5} \\\\
&=& 1.6 \\\\
\end{eqnarray}

Aが平均的に勝つ割合は


\frac{1.6}{2.2} = \frac{8}{11} \fallingdotseq 0.727

期待値2.2のうち,Bが勝って決着着く回数


\begin{eqnarray}
E_{B}[n]
&=& 1 \frac{1}{25} + 2 \frac{1}{25} + 3 \frac{1}{25}+ 4 \frac{1}{25} + 5\frac{1}{25}\\\\
&=& \frac{1+2+3+4+5}{25}\\\\
&=& \frac{15}{25}\\\\
&=& \frac{3}{5} \\\\
&=& 0.6
\end{eqnarray}

Bが平均的に勝つ割合は


\frac{0.6}{2.2} = \frac{3}{11} \fallingdotseq 0.272

皇帝が圧倒的に有利だとわかる。