Gijika.comの基礎編「広告の見方を考える」のレクチャーメモ
Gijika.comの基礎編「広告の見方を考える」のレクチャーメモ
Gijika.com(https://gijika.com/rate/literacy.html)にある 基礎編「広告の見方を考える」の動画レクチャーを見たのでそのメモを残す.
基礎編は5つに分けられている.
- 広告に使われる疑似科学的なテクニックを紹介
- 愛用者の感想(Users' Review)は科学的根拠にならない
- 濃縮・混合の場合,各々で必要な成分量が足りてない場合あり
- 有名人の権威は,科学的根拠にならない
- まとめ
github: Gijikagaku/1.basic.ipynb at master · Cartman0/Gijikagaku · GitHub
基礎編1「広告の見方を身につける」のメモ
広告に使われるテクニックを学ぶことで科学的な考え方を身に着けていく.
例:以下の広告を見る
これは, とある新進気鋭のA社が, 自社の新商品「若さの魔法陣」(サプリメント) を販売するために用意した広告です.
次の文章は, A社が作成したこの商品の内容を説明したものである. まずは,この説明文を読んでみましょう.
「若さの魔法陣」には,現代人に不足しがちな15種類もの栄養成分がぎゅっと濃縮されています.
これまでに,多くの方からご愛好いただいてきました.
価格も安く抑えられており,お手頃に購入できます(80錠8640円).
愛用すれば,日常生活の不安が無くなり,より健康な心身が得られることでしょう.
A社は, この商品の売り上げによって会社の規模を大きくしたいと考えているのですが, 一方で,消費者には優しいとは言えない売り方をしている.
実は,この広告には,消費者が「錯覚」するようなテクニックが多く使われている.
そこで,これから,この広告に使われているテクニックをいくつか紹介していきます.
「若さの魔法陣」に使われている疑似科学的なテクニックを学び, 疑似科学を見抜く「まなざし」を習得していく.
基礎編2 ポイント1
"愛用者の感想 Users' Review" とは?
"愛用者の感想 Users' Review" とは?
下の感想を見てください.
愛用者の89%が飲み続けています
元気がモリモリ湧いてきました. 一度飲んだらもう手放せません. 悩んでいたころがウソのようです. 片足立ちでズボンが履けました. 手足の冷えがなくなりました. これに出会えて幸せです. 仲間にすすめています.
(右は愛用者による個人の感想です,)
- いわゆる健康食品の広告でこのような表現が目立ちます.
- 自分と似た境遇の人の感想を読むことで共感を覚えさせやすいという利点があります (心理学的視点).
- 芸能人など影響力の大きい人の意見を比較することで, 彼らのファンにメッセージを送ることもできます.しかし...
しかし,
- こうした人たちは,あくまでもあ愛用者であることを忘れてはいけません.
- 愛用者とはつまり,「商品について肯定的な意見を述べる」ことが あらかじめ予想できる人たちです.
愛用者が支持していることが,=「効果のある良い商品」とはなりません
また,図には「愛用者の89%が飲み続けています」とありますが, 裏を返せば「11%の愛用者は飲むのを止めた」ということです.
商品を連続して購入している愛用者の支持を失いつつあるともいえる.
学習の要点
- 感想は個人のものであって全員に当てはまるかどうかはわからない
- 愛用者が商品を悪くいうことはない
- 愛用者の感想にはその商品に対する「思い込み」が大きい可能性がある
-> 「愛用者の感想」とは共感を呼ぶためのテクニックであり,「実際の効果」とは異なることに注意する.
基礎編3 ポイント2
グラフの捉え方
- 商品の効果を強調するために,グラフが用いられることがある.
- 「右上がり」となっているグラフを見ると,「なんとなくよさそうだ」と直感します.
- グラフや数字には,言葉で書かれている内容を補完し強化させる作用があるようです.
グラフの意図
- このグラフの注意点は「累積」にある
- 累積とは「積み重ねていくこと」であり,売り上げの増加が示されている.
- そのため,累積グラフは「必ず右上がり」になり,「なんとなくよさそう」という印象を閲覧者に与える.
学習の要点
- グラフが描かれている広告は印象に惑わされないようにしよう.
- 「右上がりのグラフ」にはパッと見でよい印象を抱きがちであるが, 例えば「累積グラフ」だと必ず右上がりになる.
- そのグラフが「何を意味しているか?」まで考えることが重要
-> グラフの描かれた広告には閲覧者の印象を誘導するような表現が使われている可能性があり,グラフの意味まで読み取ることが大切.
基礎編4 ポイント3ぎゅっと濃縮の意味を考える
「ぎゅっと濃縮」という表現技法
「ぎゅっと濃縮」という表現技法
- よくある健康食品の売り文句に「ぎゅっと濃縮」という表現技法がある.
- 「いろいろな成分を一度に摂取できるからよい」というメッセージがこのような表現には込められている.
- 「ぎゅっと濃縮」の背景にある費用と効果の関係を考えてみましょう.
費用と効果の関係
- まずは,商品の費用を考えてみましょう
- この商品の場合,80錠で8640円なので,1錠当たり108円となる.
- この商品では,15種類もの成分が1錠108円で摂取できることを魅力として売り出してるが, それは本当に魅力なのでしょうか?
成分の効果については,「量」の観点から検討が必要である.
1錠に多くの成分が濃縮されている場合,1成分あたりの含有量に注意が必要.
- 一般的な錠剤の重さは200mg~500mgのため,含まれる成分の全体量もそれが上限となる.
- 15種類もの成分が1錠に含まれていたとすると,効果を実感するのに十分な量が含まれていない可能性があります.
例:グルコサミン
- 例えば,健康食品として販売されているグルコサミン商品では,1日あたり1000mg~1500mgの摂取を勧めている.
- 15成分が含まれている錠剤においてこれだけの量を摂取しようとすると,何錠もの摂取が必要になる.
- 結果的に, 「濃縮していない」食品を摂取したほうが費用の面で経済的となることも起こるでしょう.
成分の意味を考える
当然ながら,健康食品会社が勧める「摂取量」は, その成分の本当に必要な「摂取量」とはイコールにはならない.
聞きなれない成分名が,その効果とセットになって宣伝されることがよくあるが, 作用の原理には注意を払いましょう.
「年齢とともに○○(物質名)が減少しています」の行間には常に「だから健康食品で補給しましょう」というメッセージがある.
広告の行間を「読まない」意識が重要
- 「○○が単に体に必要なくなってきただけではないか」
- 「○○を直接摂れば解決するのか」
- 「○○を採りすぎることで,体のほかの部位へ悪影響を及ぼすことはないのか」
- 「○○が減少することは本当に悪いことなのか」
こうした疑問をもちながら,広告にある成分と効果の説明を読んでみる.
学習の要点
- 「ぎゅっと濃縮」には費用と観点からの検討が必要
- 効果を実感するのに「十分な量」と「適切な価格」であるかどうか疑問をもつ
- 本当にその成分を摂取する必要があるのか調べる.
=> 広告に書かれた「行間」を読まないようにする 魅力的に思えるキャッチコピーには売り手の意図がある.
基礎編5 ポイント4 まとめ
ポイント4 権威の利用に気を付けよう
- 健康食品などの広告に用いられるテクニックは他にもいろいろある.
- その1つに「白衣効果」の利用がある.
- 白衣を着た人に対して無意識のうちにに,知的で,権威的なイメージを抱いてしまうという効果.
- 医者や研究者など,専門性の高い職業についている人物の発言のほうが正確であるという認識が, 社会的に学習されているといってよい.
白衣効果と商品の信用
このような「人物の属性」を強調することは商品の信頼性を確保するうえで役立つ.
「知的で権威のある人言っているのであればそうだろう」というある種の錯覚が利用される.
商品の広告に著名人(タレント,医師,弁護士,大学教授)が採用されることがよくあるが, 背景には「この商品を信用させよう」という売り手の意図があることが予想される.
特に研究者の場合,特定の商品に肩入れするような態度は「公共性」の観点からも相応しいとはいえない.
○○賞受賞
同様に,「○○賞受賞!」といった宣伝文句も見てみましょう
- いかにもそれらしい賞を受賞し,付加価値としている商品もあるようです.
- ここでも,「何を基準に」「どういう理由で」選ばれたのかをよく見極める必要がある.
- 「商品の受賞」と「科学的な効果」を安易に結び付けない見方が大切である.
学習の要点
- 権威の利用に注意しよう
- 著名人の広告には,商品の信頼性を高める心理的効果が利用される(白衣効果).
- どういう理由で賞を受賞したのかという「基準」を考え,「科学的な効果」とは分けて考える.
-> 付加価値として用いられる「権威」に注目してみましょう
まとめ
これまでに見てきたように,健康食品の広告には閲覧者が錯覚するようなテクニックが多く使われている.
著しい「論理の飛躍」がみられ,消費者に対して親切とは言い難い広告もある.
直感的に訴えかけるこうしたテクニックに対して,論理的に考えながらそのカラクリを読み取りましょう
「科学的な効果」と「広告としての魅力」を分けて考えることが大事.
広告の見方を学ぶことは,疑似科学サイトの評定基準のうちの「論理性」「体系性」「客観性」「妥当性」に関わる.
健康食品の広告で謳われている効果に対しては,
- 「論理的な飛躍はないか(論理性,体系性)」
- 「客観的な情報なのか(客観性)」
- 「提示されたデータは適切か(妥当性)」
などの疑問を持つことが大切
今回学習したポイントを日常生活に活用してみましょう.
参考資料
- 消費者庁,「打消し表示に関する実実態調査報告書」, pdf,2017, (2017年発行を訂正したもの)
- 消費者庁, 「健康や栄養に関する表示の制度について」
- 厚生労働省「医薬品等の広告規制について」