Gijika.comの応用編Bセット「バーナム効果,自己成就予言,認知的不協和,学会/論文,説明責任,誤謬論」のレクチャーメモ
Gijika.comの応用編Bセット「バーナム効果,自己成就予言,認知的不協和,学会/論文,説明責任,誤謬論」のレクチャーメモ
前回は,応用編Aセット「標本の偏り,プラセボ,確証バイアス,後付け仮説,万能理論,因果関係と相関関係」についてまとめた.
今回は,Gijika.com(https://gijika.com/rate/literacy.html)にある応用編Bセット「バーナム効果,自己成就予言,認知的不協和,学会/論文,説明責任,誤謬論」の動画レクチャーを見たのでそのメモを残す.
このセットは6つに分けられている.
Github: Gijikagaku/応用編Bセット.ipynb at master · Cartman0/Gijikagaku · GitHub
バーナム効果
「あなたには,人から好かれたいと思う傾向があります.」
「あなたにはまだ発揮されていない才能が眠っています.」
- ベテランの占い師にこのように言われたら,多くの人は「当たっていると思い込み」,この占い師を優秀だと信じるでしょう.
- しかし,これは,「誰にでも少しは当てはまる部分」を指摘しているに過ぎない.
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%A0%E5%8A%B9%E6%9E%9C
「誰にでも当てはまる文」(バーナム言明)をきくと、自分の特徴や来歴が当てられたかのように思う現象のことをバーナム効果という.
奇術師のバーナムの言葉から命名されたもので,占いで多用されている.
十中八九は当たる事を言うテクニック全般を,広くバーナム効果ということもある、
自己成就予言
https://www.youtube.com/watch?v=yA6Ljd9F8Mc&feature=youtu.be&rel=0
自己成就予言とは,将来を予言できたように見えても,自分でそれを実現していることをいう.
例えば,占いで自分の将来に関する理想的な姿を口述されると, 知らず知らずのうちにその予言の実現に向けて努力してしまう傾向が人間にはある.
予言が当たったかのような認識が生まれる現象を「自己成就予言」あるいは「予言の自己成就」などという.
「自己成就予言」の利用例:
自己成就予言は,占い師によって巧みに利用される.
例えば,占いの来談者が自ら進んで行いたいようなことを「占う」.
ベテランの占い師に,「あなたはもっと前向きで友好的に振る舞うようになります」などと言われると,なんとなくその通りに振る舞いたくなってしまう.
認知的不協和
認知的不協和は,事実の認識を曲げしまう心の働きである.
釈迦心理学のレオン・フェスティンガーによって,記憶の改竄(目撃証言)が起きる典型的な心理状態として提唱された.
人間の行動を説明する上で強力な理論として高く評価されている.
彼の実験では,「大変な仕事」をした人が「少額の報酬」を受け取ると, 後から仕事の印象記憶が「有益だった」などと変わっていることが見つかった..
反対に,相応の高い報酬を受け取った人は「大変だった」などと報告した.
認知的不協和は,このように,人が矛盾した認知を同時に抱えた状態におきる認知のの「ひずみ」のこと.
「大変な仕事」なのに「少額の報酬」という構図が,憤りの気持ちを引き起こした.
認知的不協和の解消:
認知的不協和状態に陥ると,それを解消しようとする心の働きが起こる.
「大変な仕事」という印象を「有益な仕事」に変化させるなどの記憶の改ざんが起こる.
例:
例えば,高額のお守りを買ったときにも認知的不協和はよく起き,疑似科学信奉の原因の1つになっている.
「高額のお守りを買ったのに効き目が定かでない」といったときに,認知的不協和を解消させるために「絶対に効くはずだ」と思い込んだり,他の人に同じお守りを薦めて,効いたという事実を集めようとしたりする傾向が人間にある.
学会/論文
学会は,同じ分野の’学術的な探求する人々が集まり,交流する場である.
通常は,投稿論文を審査・掲載する学術論文誌の発行や,議論の場となる研究会,大会,国際会議などを開催している.
学会では,さまざまな考え方や研究アプローチを持った人々が集まり,互いに切磋琢磨している. 一般の方からすると,学会は大変権威あるイメージですが,健全な研究姿勢を持ってれば,原則誰でも歓迎されるオープンな場である.
逆に,学会を過度に権威付ける主張には注意が必要.
査読論文について:
学術の世界で評価される仕事の1つに,査読付き論文がある.
これは,投稿された論文を審査するシステムで,その論文を掲載するかどうかを評価する.該当分野の専門家が掲載の可否を判断しているため,査読論文の信頼性は基本的には高いと言える.
査読論文であるかどうかは信頼性の指標の1つではあるが,もちろんそれ以上に,研究デザインや内容が重要である.
査読論文の保証:
- 査読に通っているからと言って,そのデータが示す内容が正しい(真である)ことを保証しているわけではない.
- 「研究的な価値がある」ことが認められたもの,といったほうが適当である.
説明責任
何らかの仮説を提唱する場合,「主張する側」がその根拠を示さなければならない. これを「説明責任」,「立証責任」などと呼ぶ.
例えば,「生命活動の効果によって万病が治る」との主張をする場合, 「生命の波動」とは何を指すのか?などを明らかにした上で,それを実証する必要がある.
仮説を主張する側にすべての責任:
科学では仮説を主張する側にすべての責任が帰属され,それ以外の立場は説明が有効かどうかを評価する.
有効な説明になっていければ基本的に受け入れられない. 例えば,仮説に賛成しない学会があっても,その仮説の誤りを示す責任は生じない.
そもそも,多くの「誤っている仮説」は,細部の定義が不明確であったり,奇妙な前提条件が導入されていたりと,正しいことはおろか誤っていることも立証しようがない.
説明責任が押し付けられるケース:
疑似科学に関しては「波動の存在は否定できない」などと,批判者側に説明責任を押し付ける論法がよく見られる.
しかし,「波動」が未定義ならば,「その波動が電磁波ならば細胞を破壊してしまうこともあるよ」と批判しても,「我々の言う波動は電磁波ではない」などとかわすことができてしまう.
科学の場では,説明された仮説のうち,様々な角度からの批判に耐え抜いたものだけが,きちんとした科学理論として認められる.
説明が認められない段階の仮説は,「ないも同然」である.
科学のサイクル:
科学では「何回以上の追試で認められるものか」や「何人以上が承認すれば認められるのか」といった区分はほとんど意味をなさない.
「研究者等によるおおむねの総意が得られたもの」が正当な理論として扱われることになる.
仮説⇔検証というサイクルの繰り返しによって科学は成立しているため,新しい理論が生まれては消えている,
誤謬論(論理的誤謬)
誤謬論とは,論証の過程において,論理的・形式的に誤りのある論法のことをいう.
「間違った論法」を用いる相手との議論には注意が必要
ここでは,科学や疑似科学における論争でよく使われるいくつかの論法を学んでみる.
人身攻撃論法
- 議論の内容ではなく,議論をしている「人」に対して攻撃すること.
- 相手の知性,性格,経験,性別,祖先などを対象とします.
二者択一の強制論法
- 実際には両立しうる選択肢に対して,「どちらか片方」しかないように見せる論法のこと
- 極端な白・黒の二元論に還元した選択肢に対して,実際にはいろいろな可能性が考えられることをあえて隠す.
例:今遊んで将来棒に振るか,しっかり勉強して立派な人間になるか
参考:【対話の達人】二者択一論法への対抗策 Steve Mogi(1/2ページ) - 産経ニュース
感情へのアピール論法
- 相手の感情に訴えかける論法.例:泣き落としなど
- 現代的には,論法の相手を「煽る」ことも問題視される.
藁人形論法
- 相手の主張を極端なものにみせかけ,非合理的な意見のように見せかける論法.
- この論法では議論の本筋には関係のない些細な点を,あえて大げさに扱う.
例:「雨が嫌いだ」という人に対して, 「君は雨が全く振らなくていいと言っているが..」と相手の主張を湾曲する.
先回り論法
- 自身の主張に正当性があることを仄めかし,意見の不一致を表明する.
- 実際に意見が不一致かどうかは関係なく,あらかじめ不一致であることを前提して話す.
例:「どうせあなたは賛同しないだろうが」と話し始め,妥当な主張をし始める.
雪だるま式論法(論理の飛躍)
- 著しく論理を飛躍させた論法のこと
- ただし,将来の危険性を予測する際には役に立つ場合もある.
科学分野の議論でも,こうした論法が用いられるため議論相手に冷静に対処しましょう.
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