Gijika.comの初級編「自由と規制と疑似科学」のレクチャーメモ
Gijika.comの初級編「自由と規制と疑似科学」のレクチャーメモ
前回は基礎編「広告の見方を考える」についてまとめた.
今回は,Gijika.com(https://gijika.com/rate/literacy.html)にある初級編「自由と規制と疑似科学」の動画レクチャーを見たのでそのメモを残す.
初級編は4つに分けられている.
Github:Gijikagaku/2.初級編 自由と規制と疑似科学.ipynb at master · Cartman0/Gijikagaku · GitHub
自由と規制と疑似科学1
この講座で学ぶこと
「広告の見方を身に着ける」が前提の内容で次の項目を学習する.
1.捏造なのか?演出か?
- 捏造と演出の違いとは?
- 演出について考える
2.公的制度と疑似科学
- 疑似科学と法の関係性
- 消費者のための制度や法
捏造なのか?演出か?
以下2つの方法で画像を加工している.
- 別々の写真に写った画像を合成
- 同じ写真に写った画像をトリミング
これは捏造なのか,演出なのか
別々に写った○○の写真と♢♢の写真を合成すると捏造である.
- => 法に触れる可能性が高いので公にはあまり行われない.
複数の人が写った宴会写真から○○と♢♢のツーショットにトリミングするのは演出である.
- => 公にも行われやすい.受け手は演出の可能性をより意識すべき.
.
自由と規制と疑似科学2 演出について考えよう
「特許取得広告」を例に
この商品は特許を取得しています!!
考えるステップ1:捏造はないだろうか
- => 特許は公開されているので,もし特許を取ってないと指摘されてしまえば,法に触れる
考えるステップ2:演出はないだろうか
- => 特許取得に意味があるか,製造方法の特許だったり関係の薄い特許だったりしないか
(例)サプリメント広告が特許取得を宣伝している
ネットで特許の申請書を調べると効能の特許ではなく,成分を生産するときの設備の特許だった.
- => 一般にビジネスとして重要でない特許はとりやすい.
特許は発明者にビジネス上の優先を保護する目的(適正なビジネス競争の実現)のため, 消費者向けに特許取得を公言するのは筋違い
特許に惑わされてはいけない例の代表になる.
まとめ
書かれている情報の真偽についてよく考える.
「演出」について特に注意が必要.
- => 「愛用者の感想」などにも用心する
例えば,特許は事業者に向けたもので,「科学かどうか」を担保するものではない.
消費者に特許アピールするのは筋違い.商品の信頼性とは無関係なことが多い.
- => 公的な仕組みの意味を読み取ることが大切
自由と規制の疑似科学3 公的制度と疑似科学
- 疑似科学と法の関係性
- 消費者のための制度や法
疑似科学的言説を取り巻く公的制度
疑似科学には色々な法律や社会制度が関係してきます. 下図のように複雑に絡み合った関係のため全てを理解することは困難である. ここでは一部を取り上げて学習する.
pointは3つ.
景品表示法
- 実際以上によい商品であると見せかけたり,過大な景品付き販売を抑制する.
広告の表示は,この法律によって規制されている
- 管轄の消費者庁による摘発事例(公開情報)
有利誤認と優良誤認,違反事業者への罰則 (今後,同様の違反行為を行わないように「措置命令」が下る)
- 立証責任:優良誤認が疑われると判断される場合, 事業者が広告の根拠を示す義務がある.
(例)合格者の80%以上が使っている英検書!
-> 広告の根拠が示せなかった事業者に同様の違反を行わないように措置命令が下った
薬機法
動画1:44
薬機法(旧薬事法)は,医薬品や医療機器の有効性や安全性にかかわる法律
- => 健康食品や医薬品ではなく食品のため,その広告に対しても強い規制がかかってる.
- => 一方,広告業者はグレーゾーンを狙って広告を考える.
医療機器は人体に及ぼす危険度に応じてクラス分けされている.
下図のようにどのような医療機器として承認されているか読み取ることが大切.
機器名 | クラス | 該当機器 |
---|---|---|
一般医療機器 | クラスI | X線フィルム,手術用不織布(ふしょくふ),水銀体温計など |
管理医療機器 | クラスⅡ | 家庭用マッサージ器,補聴器,注射針など |
高度医療機器 | クラスⅢ | 人工透析器,人工呼吸器,輸血ポンプなど |
高度医療機器 | クラスⅣ | ペースメーカー,冠動脈ステント |
=>クラスIならば,取得が容易(届出でok)
特許、JIS規格
動画2:28
疑似科学性の疑われる広告が好んで使うキャッチフレーズに「公的制度からの認証」がある.
- => 「公的なお墨付き」は商品信用のための重要な要素
特許やJIS規格など,本来,事業者向けの情報が消費者向けに宣伝される場合がある.
(例):マイナスイオンにはJIS規格がある!
JIS規格(日本工業製品規格)は,さまざまな鉱工業品の品質改善, 生産の合理化,消費の合理化などを目的として定められた一定の基準,標準のこと.
=> JIS規格があることがマイナスイオンの効能を担保するわけではない(科学的に認められているわけではない).
公的なお墨付きは,重要な信用の要素だが,その内容にも注意深くなる必要がある.
自由と規制と疑似科学4
トクホ,機能性表示食品
トクホ(特定保健食品)や機能性表示食品など,事業者と消費者の双方に関連する制度の科学的根拠の考え方について,消費者は良く学ぶ必要がある.
トクホ
- => 申請された商品を個別審査.下表のような科学的根拠の考え方が採用されており,国による承認,許可となる.
トクホの科学的根拠の考え方
試験/作用機序 | 無作為化比較対照試験(有意5%) | 無作為化比較対照試験(有意10%) | 非無作為化比較試験 |
---|---|---|---|
明確 | トクホ | 条件付トクホ | 条件付トクホ |
不明確 | 条件付トクホ | 条件付トクホ |
機能性表示食品
- 事業者の責任において,科学的根拠に基づく情報を表示できる制度.
- 基本的に,人を対象とした無作為化比較対照試験の査読付き論文が1本でもあれば「科学的根拠あり」とみなされる
事業者にとってトクホよりもハードルが低い
「この情報は怪しい」と思ったときに頼れる組織はいくつかある.
自分で調べるだけでなく,相談してみるのもいい.
消費生活相談員,消費生活アドバイザーなどが資格化されている.
個別の相談窓口のある組織:
まとめ
商品広告では,消費者にとって本来不要な情報が強調されることがある.
- => 特許やJIS規格の有無は事業者向けの情報
トクホや機能性表示食品における科学的根拠の考え方を理解する.
- ヒトを対象とした試験である.
- 無作為化比較対照試験である
- 査読付き論文が多く発表されている.
公的制度の利用され方に注意し,必要な情報を読み取ることが重要.